「いつかは考えなければならない」と思いながら、つい後回しにしてしまうのが「実家」や「今住んでいる家」の行く末です。
かつて家族の笑い声が響いた大切な場所も、時が経ち、住む人がいなくなれば「負動産」となってしまうリスクを孕んでいます。
「立つ鳥跡を濁さず」という言葉があるように、自分が元気なうちに、そして判断力がしっかりしているうちに、住まいの出口戦略を立てることは、残される家族への最大の思いやりです。
本記事では、50代から100歳代まで、それぞれのライフステージにおいて「空き家・持ち家」とどう向き合うべきか、不動産売却や賃貸活用の視点を交えて詳しく解説します。

【50代】「予備軍」からの脱却。
親の家と自分の未来を俯瞰する
50代は、多くの方にとって「親の老後」と「自分の定年後」が同時に押し寄せる時期です。
1. 実家の現状を把握する
親が健在であっても、実家が将来空き家になる可能性は高いはずです。
-
権利関係の確認: 登記簿上の所有者は誰か?(祖父の名義のままになっていませんか?)
-
親の意向確認: 「最期までここで暮らしたい」のか、「施設に入る選択肢がある」のか。
2. 資産価値を知る
50代のうちに、一度実家の査定を行っておくことをお勧めします。今の市場価値を知ることで、将来「売却して介護費用に充てる」のか「賃貸に出す」のか、具体的なシミュレーションが可能になります。
【60代】「自分事」として動く黄金期。
片付けと売却の検討
定年を迎え、時間的なゆとりが生まれる60代は、家の処分に向けた「初動」に最適な時期です。
1. 「荷物の整理」は体力があるうちに
家の処分で最も高いハードルは、建物そのものよりも「中身」です。
30年、40年と積み重なった遺品や家財の整理は、想像以上に体力を消耗します。
-
断捨離の実行: 自分が住み替えるにせよ、売却するにせよ、荷物を減らすことは必須です。
2. 住み替え(ダウンサイジング)の検討
広すぎる一軒家を売却し、利便性の高いコンパクトなマンションや賃貸へ移り住む。
この決断を60代で行うことで、老後の生活動線が格段に楽になります。
【70代】「決断」のタイムリミット。
認知症リスクに備える
70代で最も重要なのは、「意思能力」があるうちに法的準備を整えることです。
1. 認知症と不動産凍結の恐ろしい関係
認知症などで判断能力が不十分とみなされると、不動産の売却や大規模な修繕契約ができなくなります。これを「不動産の凍結」と呼びます。
-
家族信託の検討: 信頼できる子供に管理・処分の権限を託しておく仕組みです。
-
任意後見制度: 将来に備え、あらかじめ後見人を決めておきます。
2. 空き家放置のコストを再認識する
「とりあえず持っておく」だけで、固定資産税、火災保険、庭木の剪定費用などがかかり続けます。70代は、これら「出ていくお金」をカットし、現金化して人生を楽しむための資金に変える絶好のタイミングです。
【80代】「整理」の完成。
子供に負担をかけないための最終調整
80代では、複雑な手続きを子供世代が主導し、本人が「見届ける」形が理想的です。
1. 境界確定と測量
いざ売却しようとした際にトラブルになりやすいのが「隣地との境界」です。昔の家は境界が曖昧なことが多いため、元気なうちに隣人と顔を合わせ、境界確定を行っておくと、相続後の売却がスムーズになります。
2. 「思い出」のデジタル化
物としての家を手放すのは寂しいものですが、写真や動画で記録を残すことで、心の中の「家」は守られます。形あるものへの執着を手放し、精神的な身軽さを手に入れましょう。
【90代・100歳代】「徳」を繋ぐ。安心と感謝の住まい
この世代では、ご自身で動くことは難しいかもしれません。しかし、「家をどうしたか」という事実は、子や孫へのメッセージとなります。
1. 賃貸管理の委託
もし家を壊さず活用したいなら、プロの管理会社に完全に委託し、家賃収入を自身のケア費用に充てる仕組みを構築しましょう。
2. 寄付や公的処分の検討
市場価値が低い土地の場合、自治体への寄付や、相続土地国庫帰属制度の利用を検討し、「負の遺産」を次世代に残さない決断をすることが、最大の徳積みとなります。
空き家を放置することの3大リスク
なぜ、ここまで「早めの処分」を強調するのか。それは放置によるデメリットが大きすぎるからです。
-
特定空き家への指定: 管理不全とみなされると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなり、税金が最大6倍に跳ね上がります。
-
建物の倒壊と賠償責任: 台風や地震で屋根瓦が飛び、他人に怪我をさせた場合、所有者が多額の賠償責任を負います。
-
資産価値の暴落: 建物は「人が住まなくなると傷みが早い」と言われます。放置期間が長いほど、解体費用ばかりがかさむ「マイナスの資産」になります。
成功する不動産処分のステップ
-
現状把握: まずは今の家が「いくらで売れるか」「いくらで貸せるか」の査定を依頼する。
-
家族会議: 独断で決めず、子供世代の意向を聞く(「実は将来住みたいと思っていた」という誤算を防ぐ)。
おわりに:次の一歩を踏み出すために
「家を売る」ことは、過去を捨てることではありません。新しい人生のステージへ進むための、前向きな整理整頓です。 空き家を放置せず、適切なタイミングで処分・活用を検討することは、あなた自身が築き上げた人生の足跡を、最も美しい形で締めくくる「愛の行動」と言えるでしょう。
「まだ早い」は、ある日突然「もう遅い」に変わります。 まずは、思い出の詰まったお家を優しく見渡すことから始めてみませんか。







